はじめての将棋まつりの巻-6

●木村一基八段(先手)対 行方尚史八段
将棋まつりラストの対局は、木村八段 vs 行方八段。解説は中村修九段、聞き手は石橋幸緒女流四段。
対局開始からしばらくは落ち着いた感じで進行していたが、29手目7五歩が指されると一転してザワザワ将棋に。

中村九段曰く、「ここは考えどころですね。素直に同歩と取っていいものかどうか。この7五歩はちょっとナメた手というか・・・。こういう手を指されると、人によってはカッとなる人もいるでしょうね。こういう局面では冷静に考えないと」
その言葉通り、行方八段は長考。同歩の一手を指すまでに、およそ10分を費やした。
さらに“木村八段の受け”について、中村九段は次のように解説。
「木村さんの受けはただ受けてるのとは違うんです。木村さんから先にちょっかいを出して、相手が反撃に出たところを受ける。それが木村さん流の受けなんです」
そういえば、おととい渡辺竜王と対局した永瀬拓矢四段の将棋を、勝又六段は「受けて受けて受けたおす将棋」と評していた。そして「だけど木村さんの受けとは違う」とも言っていた。
ひとくちに“受ける”といっても、人それぞれにスタイルがあるってことか。なるほどなあ。

将棋猫にはわからなかったが、かなり特異な進行をしている将棋らしく、中村九段も石橋女流四段も見たことのない局面だと驚いていた。たとえば50手目の石橋女流四段の感想はこんな感じ。「矢倉の将棋で、この段階で桂が跳ね違えているのは見たことないですね」

中村九段は「ひょっとしたらどちらかがウッカリ見落としているのかもしれない」と推理。「もしウッカリ見落としてたなら、その場で左手をあげてください」と呼びかけるも、両者の腕は上がらず。

その後、なんやかんやあって行方八段が勝利しました。
対局後の両者のコメント。
行方「7五歩は『まさか!』の一手。ナメられてると思いましたね」
木村「6二角をウッカリしてて。それまではナメちゃんボケてんのかと思ってたんですけどね。しかし、『左手あげてください』には参りました。ちょうど6二角をウッカリしてたなあと思ってたところに『左手あげて』ですからね。すごいタイミングで言われたので動揺しちゃった。いや、それにしてもお粗末でした」
行方「ボクも攻めを間違えて・・・」
木村「そんなフォローはいらない。うーん、しかし『左手あげて』はなあ・・・」
行方「最後は『両手バンザーイ』になっちゃったもんね」
木村「こう見えてメンタルの弱い人間なんです。・・・なんかぜんぜんおもしろくなかった。王手もできなかった。飛車取りは2回したけど」
行方「でも羽生名人相手なら、こういう手は指さないんでしょう?」
木村「羽生名人は、『ええ、ええ、ああ、そういう手もありますねえ』とか言うんだけど、最後はもっとヒドい目にあわされちゃう。しかし、『左手あげて』が・・・」

木村八段かなり「左手あげて」にショックを受けたのか、何度も何度もつぶやいていた。

【オマケその五】ラスト対局の棋譜です。間違ってたらごめん。
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲5六歩 △5四歩
▲4八銀 △4二銀 ▲5八金右 △3二金 ▲6七金 △4一玉 ▲2六歩 △7四歩
▲2五歩 △3三銀 ▲7七銀 △3一角 ▲7九角 △6四角 ▲6八玉 △5三銀
▲7八玉 △7三角 ▲5七銀 △5二金 ▲7五歩 △同 歩 ▲8六銀 △6四銀
▲7七桂 △6二角 ▲6五歩 △8五歩 ▲同 銀 △6五銀 ▲6六歩 △7三桂
▲6五桂 △8五桂 ▲6八金上る △7六銀 ▲8六歩 △9五角 ▲8五歩 △6七銀成
▲同 金 △5九角成 ▲6八銀 △4九馬 ▲7四銀 △8六歩 ▲7三桂成 △8一飛
▲7二成桂 △5一飛 ▲7七金 △7六金 ▲9八銀 △7七金 ▲同 銀 △6七金
▲8八玉 △3九馬 ▲2六飛 △7六歩 ▲8六銀 △6六馬 ▲8七玉 △7七歩成
▲9六玉 △7六と ▲5五歩 △9四歩 ▲8七銀 △8六と ▲同 銀 △9五歩
▲同 銀 △7七馬
まで82手で後手の勝ち

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