CONTENTS

P.1
●森内名人にロックオン!
●道中、浮かれまくるバカ
●上大岡、再び
●テレビの中の人

P.2
●『新手一生』か?『剛毅』か?
●じんわり愉快な森内名人

P.3
●モテモテ天彦六段
●老若男女の列と、野郎どもの列
●三崎のまぐろ+シラス

P.4
●バカの考え、休むに似たり

P.5
●森内名人 × 佐藤天彦六段

P.6
●天彦どのの手裏剣でござるニンニン

P.7
●「貴重!」かもしれないオマケ棋譜
●「次の一手」「詰将棋」の答え合わせ

●『新手一生』か?『剛毅』か?
ステージの催しが終わったので、しばし会場内をブラついてみる。
とりあえず、いちばん人だかりのしているところへ。
ははぁ、なるほど。人が多いはずだ。そこでは、上野裕和五段、斎田晴子女流五段、渡辺弥生女流1級のお三方による指導対局が行われていた。

続いて、将棋グッズ売り場をひやかしてみる。
ショーウインドウには、復興扇子がたくさん飾られていた。
みなさんけっこう達筆なのだね。あんまり悪筆ってのもアレなんで、書道教室に通って練習したりするんですかね?

冷やかしのつもりが、見ているうちにだんだんと欲しくなり、本気で物色しはじめる。
むむむ…、升田先生の『新手一生』もいいけど、加藤先生の『剛毅』も捨てがたい。
これは誰だ? 達筆すぎて読めん!
ああ、米長会長か。
で、なんて書いてあるんですか?

「この文字はやさしくて美しくて好きだな〜」と思ったら、谷川浩司九段の書でした。
「頑張り過ぎないで下さい」という文言も、優しくてイイ。
文字には人柄があらわれるといいますが、谷川九段は優しい人なのだろうと思う。おや? 一本だけ違うケースにおさまってる扇子があるよ。誰のかな?
なになに?
『我無』 九段 藤井猛
ガム? 
ああ、ムガか…。
あれ? こういうのって右から読むんだっけ? それとも左?
( ̄^ ̄;)…………。
ま、どっちでもいっか。

●じんわり愉快な森内名人
あっちこっちフラフラしているだけでも面白い将棋祭り。
あっという間に時が過ぎ、ふと時計を見ると、時刻は午後1時。

しまった!
1時から、今日の目玉イベントのひとつ“森内名人と矢内女流四段のトークショー”があるんだった!
慌ててステージ前に馳せ参じましたが、誰もがお目当ては同じとみえて、ステージ前はのぞき見る隙間もないほどに人がギュウギュウ。“立錐の余地もない”とは、まさにこのこと。

と、そこにスタスタスタと前のめりな歩行スタイルで、森内名人が登場!
ステージ前まで歩むとピタリと立ち止まり、ギャラリーに向かって深々とお辞儀。
その深い会釈に引き込まれ、つられて将棋猫も深々とお辞儀。
(?_?)う〜む、不思議だ…。まるで何者かに操られたようにお辞儀をしていた…。
これって森内マジック?

続いて矢内女流四段も登場。
お二人そろったところで、わずかな隙間からシャッターをきってみる。
で、とらえた写真がこちら↓

手前のギャラリーのおっちゃんたちにピントがきており、肝心の森内名人と矢内女流四段の姿はボッケボケ。
ワシが撮りたいのはこんなんじゃな〜い!

その後もがんばってシャッターをきってみたが、このポジションからでは、これが精一杯のベストショット。まあいい。
写真はあきらめて、お話を聞くとしよう。

…………。
ボソボソボソ…………。
…………。
(゚Д゚∩○)え?なに?きこえないよー。

懸命に耳をそばだてて、お話を聞き取ろうとしたのだが、まるで聞こえない。
「ひょっとして場所が悪いんじゃなかろうか?」と気づき、遅ればせながら場所を移動したものの、すでにプログラムは終盤に差し掛かっていた。
ために、名人戦を戦ったときの心境など、興味深い話題は、まるまる聞き損なってしまった。
( ´・ω・) 残念……。

残りの数分間だけはどうにか聞きとれたので、その模様を文字で綴ってみた。

………………………………◆………………………………

矢内「森内名人は、普段はどんな勉強をしてらっしゃるんですか?」
森内「ふだん? 勉強って将棋の勉強ですか?」
矢内「もちろん、将棋です!」
森内「そうですね〜。プロ棋士の仲間がどんな将棋を指しているか調べて勉強しますね。たとえば対局する相手がどんな将棋を指しているかだとか。
他には、詰将棋などの全般的なトレーニングをやったりします」
矢内「詰将棋の難問を解いたりするんですか?」
森内「若い頃は長編も解いたりしてたんですが、最近は簡単な問題で数をこなすようにしてます」
矢内「研究会などには参加されないんですか?」
森内「しますよ。熱心な若手棋士なんかは、指していて勉強になりますしね」
矢内「というと、勉強にならない人もいる?」
森内「うふ・ふ・ふ・ふ(笑ってごまかす)」
矢内「若手棋士と指すのは勉強になりますか?」
森内「そうですね。今の若手は段以上の実力を持っている人が多いですから」
矢内「注目している若手棋士はいますか?」
森内「たくさんいます」
矢内「たとえばどなたでしょう?」
森内「先頃タイトル戦にも登場した豊島(将之)さんとか。横浜だと、永瀬(拓也)四段も注目の若手ですね」
矢内「将来有望ですか?」
森内「有望だと思いますよ」
矢内「将来伸びてくる棋士というのは、どういう人なんでしょうか?」
森内「ん〜、全員が伸びてくるわけではないですからね〜。伸びる人というのは、素直にいろんなものを吸収できる人だと思いますね」
矢内「素直に吸収…。なるほど。勉強になります」

………………………………◆………………………………

矢内「森内名人は子どもの頃から将棋がお強かったと思うんですが、子ども時代はどんな勉強をしてらっしゃったんですか?」
森内「とにかく実践で指すことですね。子どもの頃から、周りに強い人がいたので、そういう人たちと実践で指すことがなにより勉強になったと思います」
矢内「棋士は負けず嫌いの人が多そうですが、森内名人もやはりそうとうな負けず嫌いなんでしょうか?」
森内「そうですね〜。負けず嫌いではあるでしょうね。たとえば子どもの頃、母親に負けて、悔しくて机の下にもぐって泣いてたことがありますから。
負けず嫌いといえば、矢内さんもかなりなものだと聞いてますが。
対局に負けた時、トイレで泣きながら腕時計を壁に投げつけたとか…?(名人の逆襲)」
矢内「あ・は・はは・は… は…(苦笑い)。そういえば対局中、指しながら泣いてたこともありました」
森内「子どもの頃ですか?」
矢内「いえ、かなり大きくなってから…」
森内「まあ、私も負けず嫌いではあるんですが、最近は負け慣れてしまって『しょうがないなぁ」と思うようになっちゃった」
矢内「なにをおっしゃいますやら」
森内「いや本当に。負けて気落ちはしますけど、自分のミスで負けた時には『しょうがないなぁ』と。相手が強くて負けたんなら『また頑張ろっかなぁ』と、そんな感じで。ものすごい落ち込んだりということはあんまりなくなりましたね」
矢内「棋士によっては、負けるとものすごく落ち込んで、2-3日はふさぎ込んだりする人もいるそうですが?」
森内「そこまで落ち込むことはないですねぇ。負けた原因を究明したら、それでおしまいにして、次にきりかえますね」
矢内「気分を切り替えるための独自の方法などありますか?」
森内「体を動かすことかな。走ったり」

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矢内「森内名人は多趣味という印象があるんですけれど」
森内「いや〜、飽きっぽいんで、長続きしないんです」
矢内「むかしクイズ番組に出演されたことがありましたよね?」
森内「ずいぶん昔ですけどね。最近はそういう勉強をぜんぜんしていないし、知識も忘れる一方なので、クイズはちょっと…」
矢内「将棋の勉強もして、さらにクイズの勉強も…! 記憶力が良かったんですか?」
森内「若かったから。若い頃はエネルギーがあまってたので、将棋以外のことにもエネルギーを割けたんだと思います」
矢内「記憶ということに関して、いつも感心してしまうというか、驚いてしまうことがあるんです。森内名人をはじめ、プロ棋士の方々はすごく記憶力がいいなぁと。みなさん、古い定石から最新型まで、本当によくご存知ですよね。とてつもない量の棋譜データを記憶してらっしゃって…。どうやったらあれだけの膨大な量のデータを覚えられるのかなぁ…と思っちゃうんですけれど。
森内名人はどうやって記憶してらっしゃるんですか?」
森内「すべて覚えられるわけじゃないですよ。私の場合は、自分が気になるところとか、使えそうだなと思うところだけ覚えておくようにしてますね」
矢内「なるほど。参考になります。
あと、やはり記憶に関してすごいなと思うのが、たとえば大盤解説をされている時に『この局面はあの対局の時の…』という感じで、蓄積されたデータの中から瞬時に必要なデータを呼び出せるんですよね。常々すごいなぁと敬服しているんですが…」
森内「ま、将棋の記憶だけですけどね。長い間、仕事でやってますから。まあ、それくらいは出来ないと」
矢内「ぅぐっ…、がんばります…」

………………………………◆………………………………

矢内「最後に、森内名人の今後の豊富といいますか、目標などをお聞かせねがえますか?
たとえば、『次はこのタイトルを狙います!』とか」
森内「いやぁ、全部ねらってるんですけど、なかなか挑戦できないんです。
でも、名人戦は来年確実にありますから、防衛できるようにがんばりたいと思ってます」

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ほんの短いトークショーだったが、これを見たおかげで森内名人の印象が少し変わった。
真面目一直線で、面白いことを言ったり、やったりしない人なのかな…?
ぼんやりとそんな人物像を想い描いてた。
生真面目な印象は変わらないけれど、単に生真面目なだけじゃなく、実は落ち着いた外見にそぐわぬトボケた味わいを持ち合わせていることが判明。
いわゆる“天然ボケ”キャラ要素を持っていた。
森内名人のそんな意外な一面を見られただけでも、将棋祭りに行った甲斐があったというものじゃ。


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