contents

P.1
●初日

P.2
●文吾節
「次の一手」と「詰将棋」
●東急

P.3
●2日目
●超棒銀!
「次の一手」と「詰将棋」2

P.4
●おまけ・棋譜と回答
その1
棋譜:石橋幸緒女流四段対井道千尋女流初段
その2
棋譜:三浦弘行八段対深浦康市九段
その3
棋譜:加藤一二三九段対森内俊之名人
その4,5,6,7
「次の一手」「詰将棋」答え




●2日目

お話を京急に戻します。この日はいよいよ加藤一二三先生の登場です。
 会場に到着した時には、既に鈴木環那女流二段vs熊倉紫野女流初段による「シンデレラ対局」が始まっていました。解説はもちろん加藤先生、聞き手はお人形のように愛らしい安食総子女流初段です。  加藤先生の解説は非常に熱がこもっていました。時には腕を上下にブンブン振りながら力説されたり、時には脳内将棋盤で進行を読んでみたり、あるいは大盤の真正面に立ってコマを動かしてみたり。そしてややお疲れになると、腰に手を当ててお休みされたりしていました。

加藤先生の頭の中はいつも将棋で占められているというような話を聞いたことがありますが、解説に熱弁を振るわれる様子を見ていて「ほんとなんだなぁ」と実感しました。
 その後、指導対局もされた加藤先生ですが、改めてその人気の凄まじさに驚かされました。加藤先生の周りは人、人、人・・・人がビッシリ。立錐の余地もないとはこのことです。その人の壁のわずかな隙間から覗きこんで捉えたショットがこちらです。さらに加藤先生がちょいと通りがかったりすると、必ずファンに声を掛けられ握手を求められていました。加藤先生と握手。いいな、いいあ。メチャメチャ羨ましかったので、将棋猫も勇気を振り絞って加藤先生にお声を掛け、握手をしていただきました。先生の手のひらは想像通りぽちゃぽちゃしていて柔らかかったです。
 ステージではその間もいろいろな催しが行われていました。勝又清和六段vs瀬川晶司四段による「最新型の攻防指定対局」だとか、瀬川四段出題、回答者は女流棋士勢揃いという詰将棋大会などなど、どれも楽しいものばかりでした。それらのイベントが行われている中、加藤先生は会場からふらりといずこかへ立ち去られました。遅い昼食をとりに行かれたのでしょうか。鰻でしょうか、それともお寿司?

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 余談ですが、東急の扉の外には異空間がありましたが、京急ではトミカ・プラレールフェスティバルが開催されていました。京浜電鉄の制服を着て、京急プラレールに乗ろうというものです。このプラレールが結構よくできてました。
 さらに余談ですが、東急のイベント案内がこちら。ちょっと素っ気ない?
 一方、京急では電車の中吊りを始め、上大岡の改札口にはご覧の通り案内ボードを設置して「将棋まつりでお出迎え」モード全開でした。

 また、今年はパイプ椅子じゃなく、疲れない椅子になっていてとても快適でした。ありがとうございました。m(_ _)m

●超棒銀!

さてさて、この日のメインイベントです。この対局は「戦法指定対局」という趣向で、加藤先生が棒銀で先手、対する森内俊之名人は四間飛車と戦法が指定されています。生で加藤棒銀を観戦、しかも相手は現名人。これは将棋ファンなら誰しも見てみたい一局でしょう。事実、これをお目当てに足を運ばれたという方も少なくなかったようで、対局開始数分前には既に客席が埋まっておりました。
 加藤先生、森内名人の登場です。加藤先生によれば、「実は私、素晴らしい攻め方を思いついたので、それで今回の手合いになったんですね」とのこと。つまり、棒銀でスンバラシイ新手を思いつき、それを将棋まつり仕切りの中村修先生が聞きつけ、今回の趣向が実現したと、こういうことらしいです。
 また、加藤先生が棒銀を指し始めたきっかけについても語られていました。これは有名な話なので既にご存じかと思います。
加藤「ボクはまあ銀が一番好きなんですね。それとNHKのラジオ対局で大山先生をぶっ飛ばしたことがありまして、それからでしょうかね」

 先手▲7六歩で対局がスタート。初手から24手目△5二金左までは指定局面なので、スラスラ進みます。そして27手目▲3七銀と上がると、会場から盛大な拍手が沸き起こります。解説の勝又六段曰く「銀が上がるだけで拍手をもらえるのは加藤先生だけでしょう」と。(゚д゚)(。_。)(゚д゚)(。_。) ウンウン、確かに。
 進んで43手目▲3六飛。「これが加藤定石です。去年およそ2000局の対局がありましたが、その2000局中この形が指されたのはわずか3局です。その3局全てが加藤先生でした」という貴重な勝又六段情報が入りました。さすがプロフェッサーです。
 51手目▲4六銀。勝又六段が「この迫力!」と絶句。(゚д゚)(。_。)(゚д゚)(。_。) ウンウン。棒銀ってこんな迫力ある攻めだったんですね。ハム将棋で棒銀を学んだものですから、こんなパワフル棒銀は見たことありませんでした。
 61手目▲4四歩。さきほど飛車の両サイドに並んでいた銀のうち4筋側が前に前進できました。勝又六段の解説によれば、こうなればもう2筋は放ったらかしになるそうです。なぜなら、この戦法はどちらか一方の銀が出られれば良いからなんだとか。そういうもんなのか、(´・∀・`)ヘー
 63手目▲3四銀。ついに銀がここまでやってきました。サッカーで言えば、左のサイドバックがフィールドを斜めに横切り、逆サイドの高い位置まで駆け上がって攻撃参加する感じでしょうか。何と言うか、とにかくすごい突進力です。
 加藤先生情報ばかりではありません。聞き手の山口恵梨子女流初段から名人に関するコア情報がもたらされました。
山口「森内名人はパイン飴がお好きだそうです。皆さん、これから森内名人に差し入れされる時にはぜひパイン飴を」
勝又「もちろん加藤先生にも差し入れを。有名なところですと、チョコ、みかん、カルピス、鰻、お寿司あたりでしょうか」
 66手目、後手の森内名人が△5三金としたところで、勝又六段が腕組みをして「これは悩ましい手ですよ。さすが鉄板流。これには加藤先生も考えるんじゃないですかね」と唸ります。しかし次の加藤先生の手に勝又六段をはじめ、会場から「おお!」というどよめきが起こります。その手とは▲4三角。勝又六段曰く「これは振り飛車党が震え上がる手です」。グイグイ攻める加藤先生の将棋と、これを受け止める森内名人の将棋。面白すぎて目が離せません。
 局面の進行とともに、加藤先生の動きがどんどん活発化していきます。伸び上がったり、縮んだり。

80手目△1九飛成のところでは、どういう意味か、加藤先生は右手を高々と挙げられます。これを見た勝又六段が、呼ばれているのかと思い、「はいはい」と御用を伺いに行くと、何のことはない、加藤先生はただ伸びをしておられただけでした。コケる勝又六段。さすがのプロフェッサーも加藤先生に振り回されておりました。
 87手目▲5三金。「いよいよ全体重を乗せて攻めて来ました」と勝又六段解説。それはいかにも重そうです。
 91手目▲1二龍を見た山口女流初段が「味良し道夫ですね(*^_^*)」と豊川孝弘七段語録を引用。いろんな方に使われ何度も聞いたことのある語録ですが、山口女流初段が使うと不思議と新鮮でした。
 進んで102手目△6二金打。この手に解説陣も会場も「おお!」のどよめき。か、堅い。鉄板流炸裂? ご本人はその呼び名がお好きではないそうですが、しかし「鉄板」という表現以外浮かばない、実に堅固な陣形です。「これだけで、誰と誰が指してるかわかります」と勝又六段。いや、ほんとに。
 「相手が鉄板だろうと進むのみ!」とばかりに、105手目▲8五香打。香車のロケットが発射台にセットされ、またもや会場が「おお!」と沸きます。
 さらに進み118手目△6一金打。勝又六段が予想していた通り、何度でも固める森内名人。うひぃ〜、て、鉄板だぁ〜。見てるだけで根負けしそうです。しかしなおも攻めを続ける加藤先生に対し、指されたのが136手目の△7三金左。こ、これは・・・。勝又六段曰く「相手をウンザリさせようという手です」。わかる、わかる、(゚д゚)(。_。)(゚д゚)(。_。) ウンウン
 最後は森内名人の△7五同歩を見て、加藤先生が投了されました。152手にも及ぶ熱戦で、対局者のお二人もずいぶんとお疲れの様子でしたが、見ているこちらも相当くたびれました。いやはや、ものすごい対局でした。
 対局後のコメントですが、「加藤先生の迫力に押されっぱなしでいいところがなかったです」と森内名人。対して「(67手目の)4三角は手応えを感じたんですけど。少しいいと思ってたんですけど、だんだん難しくなって、最後は鮮やかに負けましたね」と加藤先生。さらに続けて「新手で加藤一二三が森内名人に快勝というニュースが出るはずだったんですが」ともおっしゃっていました。「結局新手はどれだったんですか?」という勝又六段からの質問がありましたが、今回の進行では出せず終いだったそうです。最後に勝又六段からこんな提案が。「次回は『加藤先生の棒銀講座』はいかがですか?」と。これには会場も大拍手で応えます。というわけで、来年はひょっとするとこの棒銀講座が実現するかもしれません。
 兎にも角にも福崎、加藤両先生を堪能できた、まことに楽しい将棋まつりでした。次の野望は、藤井猛九段解説と豊川孝弘七段解説を生で見ることです。いつになることやら。

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2日目の「次の一手」と「詰将棋」です。
まずは「次の一手」。この問題は森内名人からの出題です。


そして「詰将棋」。こちらは加藤先生からの出題です。



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