【ボケとツッコミ】
指し手も進み、33手目▲2四飛とされたところで谷川九段が長考。持ち時間を使い切る。
ここで大内九段ボケる。
大内「考慮時間1分ていうけど、ホントは1分ないんだもん」
斎田「いえ、ありますよ」
冷静にかえす斎田女流四段。どうも大内九段は一手30秒の秒読みと1分単位の考慮時間を混同なさっているご様子だ。
なおもボケる大内九段。
大内「あ、そう。でも達人戦はNHK杯より時間短いよね」
客席から「同じだよ」の声がとぶ。
大内「あ、そう。同じなの? ボクよりファンの人の方が詳しいね。なんだか竜宮城から出て来たみたいだよ」

再び大内九段。
大内「この×(バツ)はなに?」

どうやら別窓で出た分岐の×印が気になったらしい。
斎田「これは分岐の・・・」
大内「ああ、分岐。でも変化は消しとかなきゃわけわかんなくなっちゃうよ」
と、ひとの話を最後まで聞かない大内九段。
大内「ああ動かすと出るんだね。だけど動かさないわけいかないもんね。ここでただじっと立ってるわけいかないもんね」
大内九段・・・なかなか面白い人だ。

すぐ背後でアホなやりとりが繰り広げられているというのに、対局者はクスリとも笑わない。
そういえば京急将棋まつりの時、木村一基八段が言ってたっけ。
「対局に集中して周囲の雑音が聞こえないのは佐藤さんくらいですよ」と。
しばし対局者に注目してみていると、両者の癖らしきものがみてとれた。
佐藤九段は考え込む時、リズミカルに体を前後に揺らすのが癖なようだ。
谷川九段は扇子に手を持って行くのが癖らしい。扇子を持ったり離したり、パチリパチリと開いたり閉じたり。たぶん本人は気がついていない癖なんだろうなあ。
ちなみに読み上げの上田女流ニ段は、両対局者の様子をつぶさに観察しているようだった。読み上げのお仕事も注意力散漫じゃつとまらないんでしょうね。

【鼻高々】
43手目▲6八銀に対して、大内九段の予想は△6四飛。斎田女流四段は△1八飛もあるのではと質問。
大内「そういう手は、ボク好きじゃないんだ」と一蹴。
注目の44手目は大内九段が予想した△6四飛だった。
大内「ここまではボクの言った通りになりましたね。<(`^´)> エッヘン 私、まだあすこ(対局者の席を指して)に座っても大丈夫かな。」
すんごく自慢げだ。鼻高々だ。

【咳】
60手過ぎたあたりから、佐藤九段がしきりと咳をするようになった。
むかし『情熱大陸』で、緊迫した局面になるとなぜか咳が出てくるのだと語っていたっけ。
ということは、今が緊迫した局面なのか? 将棋猫が思うに、なんとなく後手の旗色が悪いの? そうなの? う〜ん、わからないや。

わからないやと思っている人は将棋猫ばかりではなかったようで、斜め前でとなりの席の女性にしきりに解説している紳士がいた。お年を召してはいたが、たいへん上品そうな奥方と、これまたたいへん上品そうな旦那さまのご夫妻(たぶん)。旦那様の一生懸命解説する様子を見て、奥方は楽しそうに笑っている。ちょっと素敵な光景だった。

その一方で気持ちよく眠りこけている人たちも。
客席をぐるりと見回したところ、チラホラとかいうレベルじゃなく、けっこうな数の人が寝ておりましたよ。もったいないな〜。
思うに、斎田女流四段のか細く優しい声が子守唄のような効果をもたらし、人々を次々と眠りへと誘ったのではないだろうか。実をいえば、将棋猫も危うくそのひとりになりかけたが、「せっかく有楽町くんだりまで出て来たのに、寝てしまったら“もったいない”」という貧乏根性が働いたため、眠らずに済んだのだ。
ドイツには“Sandmann(ザントマン)”という妖精がいるそうな。大きな砂袋をもった男で、袋の中に眠気を誘う魔法の砂が詰まっていて、その砂を投げかけられると眠らずにはいられなくなるんだとか。ひょっとして斎田女流四段は・・・。

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